《MUMEI》
決着・・つかず
「・・・・・氷を足場にして、全方位から切り刻む・・・そういう事ですか?」
自分を囲むように浮遊している薄い氷の欠片を睨みながら、刀を構え直す。左肩からは絶えず、血が流れ、足元に血溜まりを作る。
「そう。うまく、狙えないけど・・」
その言葉が言い終わる前に、連続して氷が砕ける音が響く。
ホークアイで強化した動体視力ですら追いきれない、速度。
さらに何箇所かに傷を負い、片膝をつく式夜。
「・・・負けを認めて。」
攻撃を止め、声をかけるレイ。
「たしかに・・痛いことは痛いですし・・勝ち目が薄い事も認めます。でも、そこで退いたらせっかくの訓練の意味が無いですから。」
笑みを浮かべる式夜。周囲に蒼い燐光が舞い、雷光を帯び始める。
「そう・・」
パリン・・・
と、氷を踏み砕く音が響く。
バチッ!!
式夜の足元で雷が爆ぜる。
瞬動を超える速度で消える式夜。
僅かに遅れて刃が抜けていく。
パリン、パリン、パリン・・
氷を踏み砕き、式夜を追うレイ。
式夜は瞬動と先ほどの移動法を併用しているようで、時折、雷光が閃く。
だが、すでに深手を負っていた式夜の速度が落ち始めた。追いつく、そう思った直後、式夜の足元に魔法陣が展開、テレポが起動され、姿を見失う。
「どこ・・」
氷の欠片を周囲に展開させながら、周囲を見渡す。
「くっくっく・・余裕など見せずに決めればそなたの勝ちであったものを・・」
楽しそうに嗤うハンディング。その横には式夜が倒れている。
「・・・・問題無し、戦闘を継続。」
足場の氷を踏み砕き、ハンディングへと飛ぶ。追従するように氷の欠片が飛翔する。
迎え撃つハンディング、左手のナイフに魔力を収束させていく。
交差は一瞬。
金属音も響かずただ、二人の立ち位置が変わっただけ・・
「・・・・・」
無言で佇むレイ。左肩に新たな傷が生まれ、血が流れている。
「ほう・・その程度で済んだか。」
視線の先、フードが切り裂かれ、素顔を晒したハンディングが嗤う。紅い瞳を輝かせて・・
「昏い刻印・・狂気の深淵・・」
ハンディングの左頬を覆う刺青に一言呟くレイ。彼女が纏っていた蒼い燐光が色を変えていく。紅く、ハンディングの瞳のように・・
「殲滅します。」

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