《MUMEI》
お見舞い
夏休み、僕は
入院しているお母さんをお見舞いに行くしたくをした。
二つ先の駅まで自転車で行く。
のどがかわいた時のために、ペットボトルに水道水をいれ砂糖を入れて冷やしておいた。
あとは死んだお父ちゃんの片身の帽子をかぶって出発だ。

せみの声が元気に鳴いていた。

ヨイショ
ヨイショ

女の子二人が
道の花壇で遊んでいた。

ヨイショ
ヨイショ

ミニバスケットコートが現れた。

お父さんと子どもが楽しそうにやっていた。

ヨイショ
ヨイショ

サッカーコートが現れた。

少年サッカー大会をやっていた。

ヨイショ
ヨイショ
チリンチリン

うしろからお兄さんに抜かれた。

背中に大きなリュックサックしょってふらふら走って行った。
遠くへ行くみたいだった。

ヨイショ
ヨイショ

駅前にきた。

ここからはすぐ分かるんだ。

だってお母さんに連れられてきた質屋さんの前の病院だから。
質屋さんの看板に矢印が書いてあり、ずっと電柱に看板があるからそれを見て行けばいいから。

ヨイショ
ヨイショ

病院に着いた。

汗をふき、砂糖水を飲んだ。


お母さんはずっと寝ていた。

お腹を切るとか聞いた。

食べれなくなるのだろうか。

熱があるのだろうか、冷やし枕をしていた。

頭を撫でた
髪が薄くなっていた。

お母さん
またくるね
元気になって
早く帰ってね
僕一人で淋しいから、ちゃん勉強しているから
と書いたメモ枕元に置いて帰ってきた。

ヨイショ
ヨイショ

道路工事が始まっていた。

大きな歯車が道路を切っていた。

ヨイショ
ヨイショ

家が近くになってきた。

せみの声がずっと鳴いていた。

だから淋しくなかった

ありがとう


お母さん

ありがとう

帽子

ありがとう

せみさん

小さな冒険の旅が

終わった。



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