《MUMEI》
愛は会社を救う(110)
翌日、一日かかって本社の査察が終わった。
ヒアリングのため支店長室に缶詰にされていた丸亀も、夕方ようやく解放された。
「赤居さん、ちょっとよろしいですか」
資料室にやって来た丸亀は、なぜかサバサバとした表情をしていた。
「これはまだ、内々示なんですが」
ふっと頬を緩め、穏やかな顔をこちらに向ける。
「私、来月から新支店へ異動することになりました」
「ほう、それはまた急なことですね」
サラリーマンに異動は付きものだ。小さな驚きはあったものの、様々な会社を渡り歩いて来た私にとっては、決して予想を超える人事ではなかった。

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