《MUMEI》
愛は会社を救う(111)
「後任のリーダーには、山下クンが昇任します。山下クンの後任は、青地クンです」
そう言う丸亀の顔には、一抹の寂しさと、ホッとしたような喜びの表情とが入り混じっていた。
丸亀はOA椅子に座り、私にすっかり心を許した様子で、人事の最新情報を淡々と語り始めた。
「まだ役職名は固まっていないのですが、営業所移行後は、仲原さんが営業所長、山下クンが副所長、青地クンが経理系のリーダー格に、それぞれ内定したそうです。それと、藍沢クンが営業所長補佐…つまり、仲原さん直属の部下になります。秘書的な役割ではなく、権限のある役職だそうです」
由香里が研修に出されているわけが、この話でようやくわかった。
「それはまた思い切った人事ですね。場合によっては、藍沢さんの号令一下、営業所が切り回される、なんてこともあるんじゃないですか」
「ええ。今後は、山下−藍沢−青地のラインで実務が進んで行くことになるでしょうね」
由香里の目立った活躍が、上層部の目に留まったのは、私の狙い通りだった。

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