《MUMEI》 愛は会社を救う(114)「青地、このキャビネットの中味、支店に送るものと営業所に持って行くもの、先に仕分けしといて!」 オフィスの真ん中で、山下仁美がハツラツとした声を張り上げている。 背が高くひときわ目立つうえ、後ろでまとめた長い髪と黒のジャージ姿が凛として美しい。 「わかりました」 どやされた方の知子も、汗が光る顔に充実した笑みを浮かべている。 「リーダー、廃棄するPCのデータ消去終わりました」 弾けんばかりの豊満な身体を、濃紺のポロシャツとグレイのハーフパンツに包んだ由香里が、小走りで仁美の元にやって来る。 「じゃあ藍沢は、コピー室を片付けておいて。あそこ、ガラクタで一杯だから」 「はい、リーダー」 快活にそう応えながら、由香里は仁美に対して、特別な感情を含んだアイコンタクトを送っている。 そこはまさしく女の園。男の私には立ち入る隙の無い世界になっていた。 前へ |次へ |
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