《MUMEI》 愛は会社を救う(117)「ちょっとさ、上でサボんない?」 誘いを受けて、仲原と私は屋上へ昇った。 あの時のように、紙コップのコーヒーを飲みながら、中年男二人は初秋の風に吹かれていた。 コーヒーは仲原のおごりだ。 「なんだろね。業務縮小って時になって、あの見事なコンビネーションは」 まんざらでもなさそうに言いながら、次期営業所長は静かに笑った。 「俺はさ、おたくが何者かなんて、野暮なことは聞かないよ。けどやっぱ、タダの派遣社員じゃなかったわけだよね」 私はもうすぐ離れることになる城下町を見渡しながら、含み笑いした。 前へ |次へ |
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