《MUMEI》
愛は会社を救う(118)
仲原はこちらに向き直し、左手に紙コップを持ったまま、真顔で右手を差し出した。
「ありがとな。なんかちょっと、希望が見えてきた気がするよ」
ベテランからの言葉は、私にとってこれ以上ない賛辞だった。
「こちらこそ、お世話になりました」
握り返した仲原の掌は温かく、この人物の秘めた度量の大きさを感じさせるものだった。
「ま、具体的に何をしてくれたのかは、俺、知らないんだけどね」
おそらく照れ臭さから発せられた仲原の台詞は、私を心の底から楽しい気分にさせてくれた。

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