《MUMEI》
*1* ミ カ ン ア メ
「──みかーん、遅刻するぞー?」

「はぁーい‥」





聞き慣れた声に目を擦りながら返事をして、私は寝癖の付いた頭を起こした。





今日から、7月。





新しい月の始まり。





──私は、鈴原蜜花。





今年から高校生。





新しい環境にも、だいぶ慣れてきた。





優しい親友もいる。





‥?





「うわっ‥こーちゃんパン焦げてる‥!」

「? ──ぅおッ‥」





慌てて、グリルの火を止める。





「悪ぃ、今新しいの‥」

「ううんっ──これでいいよ、焦げたとこは食べないから」

「ぉ‥‥‥、ぉぅ」





この人は、私のお兄ちゃんみたいな人。





──鈴原 晃。





24歳の、アマチュア写真家。





私は10年前──この人に拾ってもらったんだ。

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