《MUMEI》 ‥冷たい雨が降っていた。 私は、滑り台の下にしゃがんで泣いていた。 ‥独りぼっちで。 『ふぇ‥‥‥‥ひっく‥』 『──どーしたチビ──こんなとこにいたら風邪引くぞ?』 ──その人は、変わった見た目だった。 髪はキャラメル色、目は青みがかって‥耳にはピアス。 背も、大人みたいに高くて‥正直‥ちょっと恐いって思った。 『家、どこだ? 送ってやるぞ?』 『‥ない‥』 『?』 『‥みつかには、おうち、ない‥』 私には‥居場所がなかった。 私はずっと、叔母さんの家にいたんだけど‥そこにいるのが嫌で抜け出した。 けど‥行くあてなんか、どこにもなかった。 だから‥居場所を捜していた。 そうしたら‥雨が降って来て‥近くの公園の滑り台の下に隠れた。 ‥寂しくて、恐かった。 ──でも。 その人が来たら、雨が止んでいた。 差し延べられた手が、凄くあったかかった。 前へ |次へ |
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