《MUMEI》 . 隣にいたアイコが気まずそうに、「早く行こうよぉ〜」と俺のシャツの袖を引っ張った。 アイコに連れられて俺は、部屋を一歩出る。 ドアを閉める瞬間、もう一度、カウンターの彼女を見た。 彼女は、顔をあげていた。 でもその視線は俺たちにではなくて、 図書室の窓の方へと、向けていた。 切なそうな、瞳だった。 俺がそれを見つめていると、 すでに廊下を歩き始めていたアイコが面倒くさそうに、「高杉ぃ〜!」と呼んだ。 俺は黙ってドアを閉める。 アイコと一緒に廊下を歩いている間、 その女の子の瞳が、頭から離れなかった−−−。 . 前へ |次へ |
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