《MUMEI》

『みつか、とか言ったよな?』

『‥うん』

『みかんって呼んでいーか?』

『みかん‥?』

『何か良くね?』

『───────』





返事に、困っていたら。





『──ほい♪』

『‥な‥に‥?』

『ビビんなよ、ただのアメだって♪』

『‥あめ‥?』





両端がねじってある、オレンジ色の包み。





──蜜柑飴だった。





『──どーした? アメ嫌いか?』

『くれるの‥?』





私は真面目に訊いたのに、その人は笑った。





『俺、結構いーヤツなんだぜ? まっ、見た目はガラ悪く見えるかも知んねーけどな。──ほらっ』





ちょっと強引に私の口に入ってきたその飴は、優しくて甘い味がした。





『おにーちゃん‥』

『?』

『みつかのこと‥おまわりさんのとこにつれてく‥?』

『何でだ?』

『‥‥‥‥‥‥‥』





黙り込んでいたら、また──その人は笑った。





『心配すんなって。行くあてねーならさ、俺ん家来いよ。妹にでもしてやっからさ』

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