《MUMEI》
狼VSごま
ハンディングと対峙しているレイの姿は、先ほどとは完全に異なっていた。白銀であった髪は紅く、血を吸った様に変色し、揺らめくような血色の燐光を纏っている。
「くっくっく・・彩も面白い相手を用意してくれる。虚構のこの世界と言えど・・存分に殺し会おうではないか。」
愉しそうに嗤うハンディング。左頬を覆う昏い刺青が僅かに濃くなっていく。漆黒のローブを引き裂き、魔力が一気に荒れ狂う。左腕を喰い尽し、腕に浮かび上がっていく左頬から首筋までにしかなかったはずの昏い刺青。ローブの下に着込んでいたのは、同じ漆黒色の袖が無く、動き易いように深いスリットが入っている服。僅かに見える左脚には刺青は浮かんでいない。
「以前、彩詩と戦った時は・うまく制御できなかった故ココまで起動は出来なかったが・・」
左眼が紅く、さらに深い紅へと染まっていく。
「覚悟せよ、塵一つでも残るなら・・幸運であろうからな!」
声と共に魔力が周囲に暴風を吹き散らす。
「神の名の下に・・貴方を、殺す!」
レイの周囲が紅く染め上がる。炎を背負っているかのように・・
ボ!!
何かを吐き出すような破裂音が聞こえた。
直後、飛来する弾丸。思わぬ方向から飛来した弾丸に対応が遅れる二人。
「式夜!」
瞬動を起動し、式夜の側へ移動するハンディング。
「・・・・・!!」
大きく跳躍し、回避するレイ。
ドッカーーーン!!
盛大に爆炎が発生する。
・・・・・・・・・・・
「きゅ?」
矢の雨を防ぐ素振りも見せず、琴の方に視線を一瞬だけ送る。
ガガガガガガガ・・
矢が鎧に当たり、音を立てるが、刺さることすら無い。
「何て鎧だよ!!」
悔しそうに弓を構える琴。
「琴、それで十分!助かった。」
体勢を立て直し、強襲するバンプ。
左右の爪には火炎が纏わり付き、ごまに向かって尾を引いて襲い掛かる。
「わ、わ、わ!!」
剣をコンパクトに振り、何とか防ぐが、押され始めるごま。
「そこだ!!!」
バンプの姿が、ごまに急接近。ほぼ零距離で二筋の炎が踊る。
ドゴゴゴゴゴ、バキィィン。
鈍い打撃音が連続して響き、鎧の破片や、6式重装鎧の半透明のシールドさえもが発光しながら飛び散る。炎に捲かれながら、岩に叩きつけられるごま。
「グルルルルル・・・」
獰猛な唸り声を漏らすバンプ。両手の炎は消えている。

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