《MUMEI》
・・・・
 国王と大貴族、どちらも国の中枢と言っていい。狙うのは容易では無いだろう、宮廷神官や下級貴族に成り下がったもと元老院を相手にするのとは訳が違っている。どちらにせよ決死の覚悟で挑まなくては仮面の男もただでは済まない。
 「順当にいけば次はメーリング家だな」
 一瞬の間に考えたエドは不敵な笑みを零し、重たい腰を上げた。
 エドの笑みは自信の表れでもあった。仮面の男との直接対決で、負ける要因が自分にはひとつもない。そう断言出来てしまうほどの自信が彼にはあるようだ。
 「それで、どうするつもりだ。仮面の男もいいが、個人的に『乙女の嘆き(スウェール・セレム)』の真相も気になるんだが」
 「絞ることはないだろ、メーリング家に行けばその両方が叶うさ。あの融通の利かない偏屈爺さんが口を割ればの話だけどな」
 メーリング家の偏屈爺さんの彫りの深い顔が浮かびカイルは鼻で笑い、背中を預けていた窓から離れた。
 エドが言い表した融通の利かない偏屈爺さんと言うのは、まことにその通りだった。現当主に代わるまで数十年、多くの場で幅を利かせ続けてきたのは有名な話で、隠居後はあまり近づこうとする者はいない。
 「なら、石像よりも重い腰、このオレが無理やりにでも動かして見せようじゃないか」

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