《MUMEI》 . 頭の中でデータを整理していると、大介が尋ねてくる。 「天草さんがどーした??」 俺は壁にもたれながら、それがさー…とため息をついた。 「昨日、図書室で会ったんだけど、『そーいうことは、ホテルでどうぞ』とか言われてー」 昨日の話をすると、大介は大笑いした。 「てか、図書室でナニしてたんだよ、おまえ!?」 彼はひとしきり笑ったあと、天草を目で追いながら、でもなぁ…と呟く。 「あのひと、冗談通じなそう。世界が違うっつーか」 …………『世界が違う』、ねぇ。 俺も天草の姿を見た。 小さな背中はどんどん遠く離れていく。 彼女を見つめたまま、俺は、確かにそうかも、と呟いた。 . 前へ |次へ |
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