《MUMEI》
・・・・
 「はは、そりゃー見物だな。二十歳そこそこの小僧が筆頭貴族たちですら近寄ろうとしない爺さんをどう言い包めるのか」
 普段寡黙なカイルにしては珍しく洒落たことを言うじゃないか、そう思いながらエドは愉快そうに笑った。他人とあまり積極的に関わりを持とうとはしない性格のカイルにとってエドは数少ない友人と呼べる男だった。カイルが洒落を口にするのを見たのもおそらくエドだけだろう。
 ひとしきり声を上げ笑ったエド、声には出していないがこちらもいつもの無表情よりだいぶ柔らかい、口の両の端を吊り上げ微笑うカイル。身長差は多少あるものの、同じ歩みで進み大貴族メーリング家の屋敷を目指していた。
 「さてと、いよいよ仮面の男とご対面か。開眼者かはたまた契約者か、楽しみだな」
 カイルの隠れた一面を見れたことと、念願の対戦相手とようやく顔合わせができると言うこと。そのふたつがエドを上機嫌にし、弾む声色をださせていた。

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