《MUMEI》
歌の意味
.


俺が、そのレポート用紙にくぎづけになっていると、天草はそれに気づき、大慌てでそのレポート用紙を後ろ手に隠した。


そうして、真っ赤な顔をして、彼女は言うのだ。


「勝手に見ないで下さいっ!!」





…………怪しい。



あんなにクールな天草が、これだけうろたえるなんて、



なにかあるに、違いない。





確信した俺は、素知らぬふりで尋ねた。


「そのレポート、天草さんのだったんだね。昨日、見かけたんだ」


彼女は答えない。ただ頬を赤く染めたまま俯いた。その顔を覗き込むように、俺は腰を屈める。


「それ、短歌?」


戸惑いながら、天草は頷く。


「古今和歌の、ひとつ…」





…………『コキンワカ』?



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