《MUMEI》

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聞き覚えがあったが、なんだかよくわからなかった。


「『コキンワカ』って、なんだっけ?」


質問すると、天草は「勅撰和歌集のひとつで、天皇が命令して編集した……」と淡々と説明するが、さっぱり理解出来なかった。

俺の呆けた表情を見て、天草は諦めたのか、「とにかく有名な歌集なの」と締めくくる。

俺は興味も沸かず、ふぅん…と唸り、それからなんとなく尋ねた。


「なんて意味の歌なの?」


天草は一瞬躊躇ったものの、ポツリポツリと口にした。


「『わたしが思うように、わたしのことを思ってくれるひとがいればいいなぁ……そういう人がいても、この世の中を生きていくのが辛いのかどうか、試してみたい』……」


「……そんな感じ」と消え入りそうな声で、呟いた。


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