《MUMEI》 . 訳を聞いたけど、頭の悪い俺にはよく理解出来なかった。俺はゆっくり身体を起こして彼女から顔を離した。 「……難しいこと、ベンキョーしてんだね」 俺のテキトーなコメントに、天草はなにも答えなかった。 沈黙が流れる。 窓の外から、運動部の掛け声が聞こえてくる。 天草はゆっくり窓へ視線を向けた。 あの切なそうな目で。 俺もそれを追う。 図書室の窓はグラウンドに面していて、野球部の姿がよく見えた。部員はストイックに練習メニューをこなしているようで、みんな大量の汗をかいていた。 俺は天草に視線を戻す。彼女はまだ外を眺めていた。 …………なに、見てるんだろう? 俺はもう一度、今度はきちんと彼女の視線の先を辿った。 . 前へ |次へ |
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