《MUMEI》
ごまの奇策
「すげ・・」
「油断するな。」
岩に叩きつけられたごまを睨み付けたまま、琴に注意を促す。
ごまの鎧は爪跡が幾筋も走り、炎によって融解している。
「痛てて・・」
そんな呟きと共に、岩が崩れ始める。
「インファイトだと、彩よりも攻撃早いんだもん、防げるわけないかぁ〜」
むくりと立ち上がるごま。どこか余裕があるようにも見える。
「相変わらず・・あんまり効いてるように見えないな。」
苦笑しながら再び爪に魔力を収束、風を纏う。
「きゅ?そんな事ないよ〜すっごく痛いし。」
楽しそうなごま。と・・
ガシュン。
鎧が音を立てて剥離する。
剥離した鎧の破片が地面にめり込む。
「よし、これでまだ戦えるきゅ〜」
数箇所、大きな損傷を受けていた鎧が外れ、軽装になったごま。と言っても普通のヒトから見ればまだまだ重装鎧の域だが・・
試しに、剣を振るごま。
さっきのまでの速度に比べ、かなり速くなっているように見える。
「さって今度はこっちのきゅ!!」
スカン!
と大きな音をたて、ごまの兜に矢が直撃する。
「一気に攻めるんだろ?」
矢を放った琴がバンプに笑いかける。
「今のは効い・・」
スカン!
また矢を放つ琴。
「・・・そうだね。」
「だろ?」
琴に笑い返し、ごまへと突撃するバンプ。
「ちょ!!」
ヒュン!
何かを言おうとしたごまに再び矢を放つ。
「きゅ!!」
剣で叩き落すごま。
そこに間合いを詰めたバンプの連撃。
「がぁぁあああああ!!!」
「きゅきゅきゅきゅきゅ!!!」
ガ、ガ、ガガガガ!
激しく火花が散る。
ごまはバンプの攻撃の致命傷になりそうなもののみを防ぎ、軽いものは防ぎもせずに、ただ攻撃する。
バンプはガードは考えず、両爪はひたすらごまへの攻撃に、ごまからの攻撃は足裁きや体を反らすことで致命傷を避ける。
「援護も・・できないな。」
後ろで見ているだけになっている琴が呟く。二人の位置は頻繁に入れ替わり、大きく離れることが無い。
「白き幽玄の姫君よ、契約の元私に力を、アイシクルブレイザー!」
「疾く、疾く、走る風、紡ぎて、織り成し・・シルフよ、力を貸したまえ、エアロダンス!」
想花、ボンカーの声が響く。
二人が戦っている場所を二つの魔法陣が覆うように展開する。
「な・・」
驚き、飛び下がろうとするバンプにごまが猛然と攻め込み、下がる間を与えない。
数百・・ハンディング戦のときよりも多くのツララが出現し、二人に殺到する。
さらにそれを覆うように風が集まり、二人の頭上で破裂し、真空波が周囲を無差別に切り刻む。風系第4位、広範囲に真空波をばら撒き、制圧するための精霊術。ボンカーの魔力が低いので、威力が低い上範囲も狭いが、魔物の大群を抑えるくらいの力のある術である。
術が終わった後には、ツララが無数に刺さったバンプとごまが未だに、接近戦を繰り広げている。
「ぐぅ・・琴!そっちの魔法使い二人、押さえてくれ!」
術によるダメージのせいで、防ぐのが辛そうになっているバンプが叫ぶ。
「あああああああああああああ!!」
気合一閃、ごまの一撃がバンプを大きく吹き飛ばす。
「了解、って聞こえて無いか・・」

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