《MUMEI》

.


天草の姿を眺めながら、俺はフツーに言った。


「ここから野球部の練習、よく見えるんだねー」


天草はハッとして振り返った。顔が赤く染まっている。

動揺する彼女を正面から見つめ返し、ニヤつきながら尋ねる。


「中村のこと、見てたんだ??」


俺の台詞に、天草はさらに顔を赤くする。


「違います!勝手なこと言わ…」


「ウソつくなって。バレバレだから」


言いかけたのを、意地悪く遮った。天草は返す言葉が見つからないのか、悔しそうに黙り込む。

俺はゆっくり窓辺へ近づき、グラウンドを覗いた。

マウンドの中村は、バッターから三振を奪い、爽やかにほほ笑んでいる。


「中村、モテモテだもんねー。分からなくもないよ」


俺は天草を振り返る。彼女は恨めしそうに俺を睨んでいた。

.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫