《MUMEI》

いつからだろう。想いの気持ちの差に気づいたのは…。いや、最初からだったのかもしれない。

4年前の春。私、早瀬雪子が羽山信と出逢ったのはほんの偶然のいたずらだった。 「もぅ信じらんない」私は友達のさよりの彼氏愚痴を聞く為に休日前の金曜日に呼び出され1人バーで待っていた。待つこと20分。さよりからキャンセルの電話が入り冒頭の台詞となった。これで3度目だ。私はニコラシカを頼み1人半やけ酒を煽っていた。ふと、隣を見ると私と同じくニコラシカを煽っている男性が目に入った。それが信だった。
「お一人ですか?」
大胆にも私は声をかけていた。
「ええ。まぁ。」
笑顔が何とも爽やかで私の心は一瞬で虜になってしまった。
「よろしかったらご一緒に飲みませんか?」
そして私達は恋人と呼ばれる仲になった。

半年後。
「早く!信。」
海辺を走り手招きする私に、信はちょっと待ってと手で合図して携帯に手を伸ばした。
家からの電話だろう。
信は結婚していて私達は不倫だった。



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