《MUMEI》
嘘の恋人
「恋人の田中君が破っても、こんな事を?」


希先輩の一言に、周りはハッとしたように


俺と忍を交互に見た。


(どうするんだ?)


俺は何も言わずに忍を見た。


「俺と祐也は恋人ではない」

「嘘よ! だって祐が、祐が…! 見たって! それにどう見たって

忍さんは」


悲鳴に近い声を上げた志貴を見ているのが辛かった俺は


「忍は俺を嫌ってる」


事実を、伝えた。


「…っ…、だって、だって、祐也は」

「…俺に好きな人がいるのは本当だよ。その人は、忍が好きな人でもあるんだ。

ごめん、志貴」

「…」


志貴は何も言わなかった。


「何で付き合ってるフリを?」


一番冷静な頼が、質問してきた。


「安藤先輩に、俺が祐を好きじゃないかって疑われた時期があって、俺は好きな人がいるからって言ったら会わせてほしいって言われて…」


俺は、そこで間をおいた。


「俺が好きな人は、もう死んでるから、会わせられないから、忍と付き合ってるフリをした」


(やっぱり辛いな)


付き合ってるフリを明かす事より、旦那様の死を口にするのが辛かった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫