《MUMEI》
・・・・
 それからも両親のいない二人に救いの手を差し伸べてくれる者は誰一人として現れず、兄妹は欠けたものを補うため、互いに支え合い、埋まらない心の傷を慰め合った。
 「ねぇ、にいさま・・・一緒に寝てもいい?」
 「――うん、いいよ。おいで」
 くりくりとした可愛らしい大きな瞳を潤ませる妹を、放っておくことは少年にはできない。ベッドに招きいれ、二人は身を寄せ合う。
 エリザは寂しいんだ。父上と母上がいないから。僕が二人に代わって愛してあげなくちゃ・・・。
 七歳を迎えたばかりの少女だ。甘えたい盛りなのだろう、しかしそれを許してくれる人はいない。
 実の兄である少年以外には。
 「にいさま、わたくし怖いです・・・・」
 少女は握っている兄の手をより強く握りしめた。
 「とうさまと、かあさまがお亡くなりになって、にいさまはどこにも行かないで」
 縋りつくように弱々しく呟き、兄の胸に顔を埋める。疲れ切った兄の身体は日増しに痩せて行っているように思えた。

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