《MUMEI》

思えば、こーちゃんは、風景を撮る回数と同じ位──私にカメラを向けていた。





──初めて、この部屋に来た時。





──誕生日。





──入学式。





──運動会。





──文化祭。





──卒業式。





本を読んでいる時とか、さり気ない瞬間にも──こーちゃんは私を撮ってくれていた。





どうしてこーちゃんは‥私を撮ってくれるんだろう‥?





楽しいって──そう言っているけど‥。





どうして楽しいんだろう?





「こーちゃん──」

「ん、どーした?」





こーちゃんと視線がぶつかって、言葉が続かなくなる。





「‥ううん。──楽しみだね、夜」





それだけ言うのが、やっとだった。

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