《MUMEI》
玉砕の真相
.


俺が中村の名前を出すと、アイコは露骨に嫌な顔をした。


「中村くんのこと??」


声まで刺々しい。
俺は極力、あっけらかんと言った。


「あいつ、すっげーモテてんじゃん。あやかりたいなーなんて思って」


アイコは不審な目を俺に向けていたが、そのうち冷たい声で言った。


「野球部のピッチャー。運動神経バツグン。性格よし。顔もまあまあ。成績も悪くない」


「以上!」と早口でまくし立てて、ぷいと顔を逸らした。

そんな情報は、知ってる。

俺はアイコを宥めながら、そうじゃなくてー、と肩を撫でた。


「もっとさーレアなこと……例えば、タイプのコとか……」


アイコは、言いかけた俺に向かって急に振り返ると、大声で遮る。


「知らないわよ!!そんなの本人に聞けば!?」


耳が痛くなるような甲高い声だった。





…………そんなに怒らなくても。





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