《MUMEI》 . 俺は耳を塞いでいた手を、一旦離してため息をつく。 「なに、イカってんの?お前があいつにフラれたの、ずいぶんまえのことじゃん。もー水に流せよ」 俺の台詞に、アイコは眉を吊り上げる。 「うるさいわね!高杉に関係ないでしょっ!!」 アイコの大音量にまた、俺は耳を塞いだ。 …………ごもっとも。 アイコは怒りの導火線に火がついたのか、つづけて言った。 「だいたい中村くん、意気地ないのよ!!ちょっと迫ったくらいで、動物を見るような目でわたしを見るんだから!!」 その台詞に、今度は俺が眉をひそめる。 「……『ちょっと迫った』??」 繰り返すと、アイコはギクリとした表情を浮かべた。 . 前へ |次へ |
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