《MUMEI》
・・・・
 それでも、何の不安も感じさせないような優しい声がする。
 「大丈夫だよ、エリザ・・・僕はどこにも行かない。
 父上と母上はいないけれど、僕たちは独りじゃない、僕にはエリザが、エリザには僕がいる。二人なら恐れるものなんてないだろ」
 少年の胸の中から見えた少年の顔も、エリザと同じでやはり寂しさを含んでいた。
 分かっていても、両親がいないのは辛い。それでも、少年は泣き言を口にするわけにはいかない
 少年がそれを零してしまったら、幼い少女の不安を増長させてしまう。
 兄であると同時に、少年は父親でもあるのだ。
 「エリザ、夜も深くなってきた。もう寝よう」
 「はい、にいさま・・・おやすみなさい」

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