《MUMEI》 . 気を取り直し、図書室のドア窓から中を覗く。 天草はいつものように、カウンターに座り、窓の方を見つめていた。 ……………進歩ねーなぁ。 ため息をひとつついてから、俺はドアを開けた。 ドアが開く音に驚いたのか、天草は急に振り返る。 そして、俺の顔を見ると、途端にやる気のない表情になった。 「オースッ☆」 元気よく挨拶しながらカウンターに近づくと、天草は居住まいをただし、返事をすることなく、カウンターに置かれている『コキンワカ』の本をペラペラとめくりだした。 …………かわいくねー。 俺は自分のかばんをカウンターに置いて、天草の顔を覗き込む。 「俺のこと気にしないで、中村見てれば?」 そう言ってやったが、彼女は冷たく「結構です」と答えた。 やれやれ、だ。 . 前へ |次へ |
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