《MUMEI》

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俺がため息をつき彼女から顔を離すと、不意に天草が顔をあげて周りを見回した。

それから俺の顔を見る。


「彼女さんと一緒じゃないんですか?」


俺は眉をひそめた。


「カノジョ?」


だれ?と聞き返すと、天草は戸惑いながら答えた。


「このまえ、ここで一緒にいた………」


そこまで聞いて、思い当たる。

アイコのことを言っているのだ。

俺とアイコが、放課後の図書室であんなことやこんなことをしようとしていたのを目撃したから、天草はきっと勘違いしたのだろう。

俺は肩を竦めた。


「あいつはカノジョじゃないよ。トモダチ」


『身体だけ』の、と付け足すのはやめた。


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