《MUMEI》

.


自然にキス出来るくらいの距離に、彼女の顔がある。

そのままのスタンスで、俺はつづけた。


「『コキンワカ』借りたいから、貸出カード作って」


天草は眉をひそめた。

俺はほほ笑みを浮かべ、言う。


「俺も天草さんみたいに、『コキンワカ』の世界に浸りたいんだよねー」


だから早く、と催促をする。

すると、天草は躊躇い、目を逸らした。


「………今、読んでいけばいいじゃないですか」


素っ気なく返す彼女に、俺はわざとらしく言った。


「ここじゃ、落ち着かないでしょ。家でゆーっくり読みたいの」


さらに、よろしく図書委員さん、と付け足す。


.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫