《MUMEI》 . 自然にキス出来るくらいの距離に、彼女の顔がある。 そのままのスタンスで、俺はつづけた。 「『コキンワカ』借りたいから、貸出カード作って」 天草は眉をひそめた。 俺はほほ笑みを浮かべ、言う。 「俺も天草さんみたいに、『コキンワカ』の世界に浸りたいんだよねー」 だから早く、と催促をする。 すると、天草は躊躇い、目を逸らした。 「………今、読んでいけばいいじゃないですか」 素っ気なく返す彼女に、俺はわざとらしく言った。 「ここじゃ、落ち着かないでしょ。家でゆーっくり読みたいの」 さらに、よろしく図書委員さん、と付け足す。 . 前へ |次へ |
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