《MUMEI》

「落ちねーようにしっかり掴まってろよー?」






こーちゃんが、私の方を振り向いて言った。





途端にスピードが上がって‥私はこーちゃんの腰にしがみ付く。





「ねぇ‥?」

「ん‥?」

「私‥‥‥」





大きな背中に耳をくっ付けて、こーちゃんの鼓動に耳を澄ませる。





「私‥」





次の言葉が、出てこない。 





「みかん‥?」





こーちゃんが、振り向いた。





‥でも私は、答えられない。





「‥‥‥‥‥‥‥‥」





伝えたいのに。





ちゃんと‥伝えたいのに。





「──なぁ」

「ぇ」

「海──行ってみっか」

「海‥?」

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