《MUMEI》

「──いー風だなぁ、今日の──」

「うん」

「いー感じに波も立ってるし」

「──ねぇ、訊いてもいい‥?」

「おう。何でもこい♪」

「風って──撮れる?」

「‥風‥?」

「目には見えなくて、色もなくて、だから──」

「見えなくてもさ、感じるヤツも写真に出せたらな、って」

「──?」

「見えるもんだけじゃなくて、写真見た時に──何て言うか、あったかいとか冷たいとか──柔らかいとか、硬いとか‥そういうのをさ、見る人に感じてもらえたら、って」

「───────」





──目に見える物だけじゃない。





見えない物まで、こーちゃんは撮ろうとしているんだ。





──波の声。





──風の囁き。





──星の唄──。





どれも、撮るのは簡単じゃない。

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