《MUMEI》

「ふー‥撮れた撮れた──」





気に入った風景をカメラに納めて満足げに笑う、そんな君を見る度に──私の心が、ボールみたいに弾む。





──君が笑っている事。





──君が嬉しい事。





それが、私には何より幸せなんだよ。





「──なぁ、岩場登ってみっか?」





突然だった。





私は一瞬キョトンとして、でも頷いた。





「──よっ‥。おーい、登れっかー?」

「うん──何とか‥。‥?」

「ほらっ、掴まんな♪」

「──ぇ」





──差し出された、大きな手。





この手に、私は何度も救われた。





数え切れない位──。

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