《MUMEI》 ・・・・カイルの目にはすべてが歪に見えた。 民も、観光客も、建物も、友でさえも・・・・それの目が、心が壊れているからなのか。それともその目が、心が純粋すぎるからなのか。 どちらにせよカイルは人を信じることはない。心の底から信じていたのは、遥か昔の話。 「なあ、エド。お前は孤児院で育ってきたそうだな」 「そうだけど、それがどうかしたのか」 「どんなものだった」 王都の果てしなく長く感じられる道のりで、カイルが口にしたのはそんなことだった。エドの肩にかかるほどに長い金髪が揺らめく。 切れ長な目に漆黒の瞳が魅力的な、綺麗な顔立ちをしている友人を見た。 「どうもなにも、他の家と何にも変わらないさ。親がいて、弟妹がいる。 喧嘩だってすりゃ、一緒に遊んだりもした。そんなもんだろ」 孤児院で育ってきたため、エドは裕福な生活を送ってきたわけではない。引き取られた孤児院は十数人の子供たちを抱えていて、食事もままならなかった。 それでもエドは面白そうに笑った。 前へ |次へ |
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