《MUMEI》
・・・・
 メーリング家の屋敷は貴族たちが住まう一画のなかでも群を抜いて豪華絢爛であった。屋敷を囲う柵は高く、先端には侵入を防ぐための鋭利な刃がつけられている。
 それに加えて邸内には警備の人間が二十四時間で歩きまわっている。昼前の現在も庭だけで十人の警備が目を光らせていた。
 警備の視線は柵の外にいる二人の騎士に向けられた。閉ざされた門の前で立ち止まり、近くの警備によく通る声で呼びかけた。
 「ゴルドフ騎士団所属、エドモンド=アーレントだ。用あって先代当主ツヴィ殿にお会いしたい」
 「わかった、用向きは。物騒なのでな、答えてもらわんと門を潜らすわけにはいかんのだ」
 そう言ってきたのは、顔に無数の古傷を残している男だ。厳しい戦いを切り抜けてきたことを連想させる、貫禄あるものだった。
 男はエドの開口一番の『ゴルドフ騎士団』を聞いて目を瞠っていた。ゴルドフ騎士団と言えばこの国の騎士たちのひとつの目標でもあるエリート集団の名称である。
 二人の力量とそれに置かれた信頼も証明される。男の警戒心も解かれつつあった。

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