《MUMEI》

夜──10時を回った頃。





私は、アコーディオンカーテンで仕切られた自分の場所にいて、開けた窓から流れ込んでくる風に当たっていた。





「──みかん」





声が、した。





──こーちゃんの声。





「起きてるか?」

「う、ん‥」






冷めかけていた熱が、一気にぶり返してきた。





「‥な‥に‥?」





緊張しながら、訊き返したら。





「夏休みさ、一緒に──蛍見に行かないか?」





穏やかな声で、こーちゃんが言った。





私は、少し考えてから──





「──うん」





そう返事をした──。

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