《MUMEI》 「こーちゃん‥? 夕焼けの方がいい?」 「──ぃゃ、そーじゃなくて‥」 「‥ぇ」 「香坂さん」 「──?」 「今月は‥やめときます」 「ぇ‥?」 香坂さんが、ポカンとした。 「何言ってるの? もう支度は出来てるわ。あなたの写真集を楽しみにしてる人達だって沢山──」 「だからやめときます」 「こーちゃん、何で‥」 私が言っても、こーちゃんは聞いてくれない。 写真を1枚残らず掻き集めると‥それをゴミ箱に放り込んだ。 「──こーちゃんっ!!」 「みかん」 「!‥」 「‥‥‥悪ぃ、今月は出せねーんだ」 「‥っ」 私はジッとしていられなくなって、ゴミ箱をひっくり返した。 「おいっ、何して‥」 「‥‥‥‥‥‥‥」 写真を全部集めると、それを抱えて‥アコーディオンカーテンの向こうに逃げ込んだ。 前へ |次へ |
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