《MUMEI》
長い長いお使い
(暑いな)


ビジネスホテルの自動ドアが開いた途端に蒸し暑い空気を感じた。


外は既に薄暗くなっていた。


(さて、行くか)


俺は、忍から渡されたメモを頼りに、目的地へ向かった。


(ここ、だよな?)


俺は勝手に弁当屋を想像していたが、そこは


小さな洋食屋だった。


カランカランッ


「いらっしゃいませ」

「あ、あの。藤堂ですけど」

「あぁ。もう少し時間がかかるから、待っててね。今、冷たい麦茶持ってくるから」

「い、いえ…」


(行っちゃった…)


俺を出迎えたおばさんは、俺の返事を聞かずに厨房に入って行った。


厨房の中までは見えないが、揚げ物を揚げている音と、香ばしい匂いが店内に充満していた。


「はい、麦茶お待たせ」

「あ、ありが…」

「おーい注文」

「はーい」


俺の言葉は今度は他の客に打ち消され、おばさんはまたすぐに動き出した。


それから、約三十分後


「はい、弁当お待たせ!お金はもうもらってあるから。頑張ってね」

「は、はい。ありがとうございます…」


(重っ!)


ずっしりと重みのある七人分の弁当のせいで、帰りは行きの倍以上の時間がかかった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫