《MUMEI》
借りた本
.


休み時間に、自分の席で『コキンワカ』をテキトーに流し見ていた。

べつに興味なんかなかったけど、

成り行きで借りたから、読んでおこうと思った。





…………もしかしたら、



天草との会話の種になるかもしれないし。





頬杖をつきながら、ページをめくっていると、

大介がニヤつきながら近寄ってきた。


「ナニ読んでんの〜??」


俺はちらっと大介の顔を見る。たぶん、エロ本かなにかを見ていると思ったのだろう。

「見せて〜!」と言い、『コキンワカ』を奪い取った。

そして、眉をひそめる。


「………なにこれ、古文??」


呟きながら、本の表紙を見つめる大介に俺は言った。


「『コキンワカ』集。昔の歌本」


返せ、と言い、大介から本を引ったくった。大介は首を傾げる。


「また、なんでそんな小難しいモノを……」


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