《MUMEI》
新展開
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放課後になると、俺は『コキンワカ』を抱えて図書室へ向かう。


いつものようにドア窓から中を伺うと、天草はいつものようにカウンター席から窓の方を眺めていた。





…………また、中村か。





俺は少しムッとしたが、あの様子ならまた今日もヤツに挨拶出来なかったのだろう。

気を取り直して、図書室へ入る。

天草はドアの方を振り返り、俺の姿を確認すると、慌ててカウンターで書き物を始めた。俺はヅカヅカカウンターに近寄り、ドサッとかばんを置く。

かばんの中から貸出カードを取り出し、そして、手にしていた『コキンワカ』を天草に向かって一緒に差し出した。


「読み終わった!」


彼女は顔をあげて、眉をひそめた。


「ずいぶん早いですね。結構な数の歌が載ってるのに」


彼女の台詞に、俺はピースサインを作ってみせた。


「ナナメ読みしたからね☆」


彼女はなにか言いたそうな表情を浮かべたが、黙って『コキンワカ』とカードを受け取り、カウンターのパソコンを使って返却業務を淡々と行った。


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