《MUMEI》 . その様子を眺めながら、俺は尋ねた。 「中村と話せた?」 彼女のキーボードを叩く指の動きが、止まった。パソコンの画面から視線をずらし、ゆっくりと顔をあげる。 そして、答えた。 「…………はい、ちょっとだけ」 ………。 ………………。 ………………………えっ? 「マジ?」 信じられなくて、尋ね返した。天草は「マジです」と頷く。 「今朝、勇気を出して挨拶したら、フツーに返してくれて……それから、なんとなく授業の話とかして……自分でも信じられないんですけど」 たどたどしく、呟いたその顔は、ほのかに赤く染まっていた。 俺は冷めた目で天草を見る。 …………ふーん。 『勇気を出して』ね。 あっそう。 うまくいったんだ。 . 前へ |次へ |
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