《MUMEI》 . 俺の様子に気づかず、天草は少し興奮したように、「……それと」とつづけた。 「わたしの名前、覚えていてくれたんです。ホントにビックリして……」 …………はぁ?? 名前なんか、知ってるだろフツー!? クラスメートなんだから、当たり前じゃん!! そう言ってやろうと思ったが、天草の嬉しそうな顔を見ていると、なぜか言葉が出てこなかった。 「………よかったね」 やっとのことで言うと、天草ははにかみながらほほ笑み、「はい……」と頷いた。 窓の外から、野球部の掛け声が聞こえる。 天草はゆっくり窓の方を見た。俺も同じように外を見る。 マウンドには、中村が。 ボールを構え、 キャッチャーに向かって、素早く腕を振る。 投げられたボールは、バッターの脇を摺り抜け、ミットに吸い込まれるように入る。 . 前へ |次へ |
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