《MUMEI》
好きになった理由
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俺は、再び天草を見た。


彼女は真摯な眼差しでグラウンドを眺めている。


その繊細で綺麗な横顔に、


問い掛けてみた。





「どうして、好きになったの?」





天草は振り返り、首を傾げた。俺は彼女を見つめたまま、繰り返す。


「どうして、中村を好きになったの?」


天草は何度か瞬いて、それから窓の方を見つめる。

遠くを眺めるような瞳だった。

彼女は、俺を見返すことなく、答えた。


「手伝ってくれたんです」


俺が眉をひそめると、彼女はグラウンドを見つめたまま、淡くほほ笑んだ。


「図書室に新しく寄贈された本をひとりで運んでいたとき、『重いでしょ?』って声をかけてくれて……」


「………え?」





……………本??





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