《MUMEI》 . よくわからず、聞き返したら、彼女はつづけた。 「中村くんだけが、本を運ぶのを手伝ってくれたんです……」 俺は少し考えて、尋ねた。 「………まさか、それだけ?」 天草はゆっくり振り返って頷いた。そして幸せそうに言う。 「あのときは、恥ずかしくてちゃんとお礼も言えませんでした……それから、彼のことを自然と、目で追うようになりました」 天草の柔らかい笑顔を見つめながら、 俺は胸の奥がムカムカしてくるのを感じた。 …………『本を運ぶのを手伝った』から?? そんなん、 俺だって、手伝ってやるっつーの!! . 前へ |次へ |
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