《MUMEI》 「それで‥那加は何かされたんですか‥?」 「いいえ、何も‥。その患者さんは間違えた事に気付いてすぐに引き返したんだけど‥‥‥那加ちゃんはパニック状態になっちゃって‥」 「‥‥‥‥‥‥‥」 「日向君‥?」 「スイマセン、あの‥那加と2人にさせてもらえますか‥?」 俺の提案に、佳代子さんは頷いてくれた。 ──2人っきりになった所で‥やっと那加が少し落ち着いたみたいだった。 「‥やっぱりダメ‥」 「駄目‥?」 「‥‥‥恐いの」 また‥肩が震え出す。 「‥恐い‥」 ‥辛そうな声。 「‥思い出すの‥‥‥やな事‥」 まだ‥あの時の記憶は薄れていないんだ。 薄れるはず‥ないよな‥。 前へ |次へ |
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