《MUMEI》 シャツの隙間から外気に肌が触れる。 アラタはふと気配がする方向へ首を動かし、地面が見えるように視線を合わせた。 足がある。 「……ばい菌だ」 赤み帯びた唇がわずかながら歪んだ。 高柳樹が立っている。 「聞きたいことが」 ある、まで樹は喉が畏縮して出てこない。 彼の白い鎖骨が覗いている、初めて見たあの白い躯を想像してしまう。不謹慎さに嫌気がさした。 「言いたいことはちゃんと伝えなさい」 黒目が鋭く樹に向かった。 「風邪ひいてしまう」 風の冷たさなのか鳥肌が立ち、樹は脱ぎ捨てたセータへ歩み寄る。 「触るなよ」 アラタの一言でセータまで伸びた手が制止した。 前へ |次へ |
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