《MUMEI》 龍侍の独立。「きょう…お仕事は?」 「休みだよ…」 「そう…なの」 敷地の中でも一番暗くて隠れやすい、俺のお気に入りな木陰でいつものようにタバコを吹かしていたら、雛が目ざとく見つけてきた。 「隣に居てもいいよね///」 「んぁ…」 俺の返事を聞く前に、雛は子供のように膝を抱えながら隣に座ってきた。 「…煙たくねぇ?」 「う…うぅん」 そんな事を言っているが、雛は目をシバシバさせながら、抱えた膝の間に鼻をつけて、いかにも煙たそうにしていた。 「……」 地面にタバコを押しつけて火を消すと、土を払って立ち上がった。 「あっ…まってι」 立ち去ろうとする俺の後を雛子が追ってきて、その小さな手で俺の袖口をギュッと握ってきた。 「ねぇ、お兄ちゃん…ココを出て行っちゃうって…ホント?」 「…あぁ」 俺も、もうすぐ高校を卒業するぐらいの年齢に近づいてきて、バイト先の親方にも気に入られてずっと通っていられるように、と話を付けてもらっていた。 そこで収入が安定してきたらココを出ようと思っている、という話を施設の奴らにだけ言ってたんだけど、何だかその話が勝手に出回っているらしかった。 「やだよ雛…お兄ちゃんと離れるのヤだ!」 「わがまま言うなよ…」 今にも泣きそうな顔、例えるなら捨てられた子犬のような…。 そんなモン見た事ねぇけど…でも、そんなカンジの顔をして俺をじっと見つめていた。 「しゃあねぇだろ…ココはガキで溢れてるんだよ」 一人の部屋を貰っているのは俺くらいのもので、俺が出ていくのを待ちかまえている奴らだっているだろう。 「…お兄ちゃんがいないと…雛…何も出来ない」 「お前…あのな…」 スカートの裾をギュツと握って泣き出してしまった雛に向き合うと、その手を握って落ち着かせた。 「大丈夫だよ…」 「だいじょーぶ…じゃない…」 泣き止まない雛に、俺の考えをこっそりと耳打ちした。 前へ |次へ |
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