《MUMEI》 嫌がらせのような注文(自動ドアで良かった) 軽く額に汗をかきながら、俺はビジネスホテルの中に入った。 「おかえりなさいませ」 (客じゃないんだけど、律義だな) 挨拶してきたフロントの女性に軽く会釈して、会議室に向かおうとすると 「あ、お客様。藤堂様からお言付けがございます」 「へ?」 「お弁当はこちらでお預かりしますので」 「はぁ…」 (何考えてんだ、忍は) 会議室のドアの前に立っていた俺は、隣のフロントに移動し、言われた通り弁当を預けた。 「こちらをどうぞ」 「はぁ…」 俺は、フロントからメモを受け取った。 そして 「はぁ…」 ため息をつきながら、再びビジネスホテルを出た。 (飲み物なんて、ロビーの自販機お茶でいいのに…) 忍のメモにはわざわざ、駅前のコーヒーショップの飲み物を買ってくるようにと書いてあったのだ。 (しかも、一つって…自分の分だけかよ) 軽くイライラしながら、俺は目的地に向かった。 (本当は七人分買うべきなんだろうけど…) 俺の荷物は会議室で、フロントで渡された忍の財布には、無数のカードと一人分の飲み物代しか入っていなかった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |