《MUMEI》

「ねぇ、日向」





ホッペタにクリームを付けたまま、那加が切り出した。





「──今年もあるのかな、花火大会」

「ぁぁ」

「見えるかな、ここから」





窓辺に近付いて、呟く。





「お祭も全然行かなくなっちゃったね」

「‥行きたいか‥?」

「そりゃ──‥」

「そうだよな‥」





行きたいに決まっている。





でも‥行けないんだ。





‥どうすればいいだろう。





「近くまで行ってみるか‥?」

「‥ぇ」

「人込みに近付かなければ大丈夫かも知れないし」

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