《MUMEI》 . ギスギスした空気のまま、二人で校門をくぐると、 遠くに見知った姿があった。 艶やかな黒髪を肩まで流し、制服をキチンと着こなした華奢な女子生徒。 …………天草じゃん。 天草はモジモジしながら、まえを歩く男子生徒の動きを伺っていた。 野球部の、中村だった。 どうやら天草は、声をかけるタイミングを計っているようだ。 彼女はしばらく悩んでいたようだったが、急に思い付いたように彼の隣に並び、話しかけた。 俺がいるところから距離があったので、なにを話しているのかはわからないが、その顔はかなり緊張していた。 中村は天草の方に振り返ると、爽やかに笑いかける。 その表情にホッとしたのか、天草の顔も柔らかくなった。 にこやかに会話をしながら、二人は並んで校舎へ向かって進んでいく………。 . 前へ |次へ |
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